学び直しに選ぶジャンルにはどういうものがあって、30代・40代・50代・60代と年代別にどういったジャンルの学び直しが人気なのか、情報をまとめました。
この記事の目次
学び直しとは?
「学び直し」という言葉を目にする機会が増えてきました。
前向きな響きで良い言葉のように感じますが、広く使われるようになった元々はどこからきた言葉なんでしょうか?
2017年の政府会議から始まった「学び直し」
「学び直し」に関する議論は、2017年に政府に設置された「人生100年時代構想会議」から始まりました。
総理大臣が議長で、早稲田大学の学長さんや、資格の通信教育で有名なユーキャンの社長さん、81歳でiPhoneアプリ「hinadan」を開発した世界最高齢のプログラマーとして知られる若宮正子さん、慶應大学の学生で株式会社GNEX代表取締役CEOの三上洋一郎さん、元サッカー日本代表主将の宮本恒靖さんなどをメンバーに、翌2018年に「人づくり革命 基本構想」が取りまとめられました。
出典:「人生100年時代構想会議」(首相官邸)
この中で、人生100年時代・Society5.0の到来など、大人・社会人が学び直しを通じて「変化に対応できる力」を養うことで経済や社会の大きな変化に対応していけるようにすることが重要視されています。
IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことが出来る社会(Society)のことです。
直訳すると「社会 Ver.5」という意味で、1~4は次のように定義されています。
- Society 1.0:狩猟社会
- Society 2.0:農耕社会
- Society 3.0:工業社会
- Society 4.0:情報社会
- Society 5.0:人間中心の社会
ロボットや自動走行車などの技術革新、また必要な情報が必要な時に提供されることで、少子高齢化・地方の過疎化・貧富の格差などの社会課題の克服が期待されています。
30代から60代の幅広い年代で広がる「学び直し」
リカレント教育とも呼ばれる「学び直し」は、30代から60代の幅広い年代で広がっています。
たとえば、現在50代の方は、10代でバブル景気(1991年~)、20代でバブル崩壊(1991年)・インターネットの普及(1995年Windows95発売)、30代で介護保険の開始(2000年)、40代でリーマンショック(2009年)・スマホの普及(2008年iPhone発売)・アベノミクス開始(2013年)、そして2020年にはコロナショックと、社会・経済の激変に翻弄されてきました。
社会は大きく変わり続けるもの、と捉えて新しい知見や技術を「学び直し」することの重要性が身に染みて分かっている方も多いのではないでしょうか。
新しいこと・知らないことを学ぶのも「学び直し」
ここで注意しておきたいのが「学び直し」という言葉から、小中高校などで学んだことを、もう一度勉強することと思いがちということです。
今、使われている「学び直し」という言葉には、自分がまったく知らないこと、未経験のこと、新しいことを学ぶことも含まれます。
「学ぶ」という行動が、学校を卒業したら終わりではなく、学ぶこと自体をやり直す、学び続けるといった意味で使われています。
かつては生涯学習なんて言葉がよく使われていましたが、意味合いとしては似たものがあります。
次々に登場する新しい価値観・概念を学ぶ
また、同時に大切なことは、新しい知見や価値観、新しい技術を学ぶ習慣をつけておくことです。
新しい価値観では「ハラスメント」という概念の登場と普及や、個人情報の取り扱い、情報セキュリティの重要性の高まり、多様性への対応・ダイバーシティという概念など、ひと昔前には存在しなかった概念や価値観が次々に登場しています。
学び直しを習慣化しておく
これからも、社会は大きく変動していくことは間違いなく、さらにその変化のスピードは上がり続けることは想像に難くありません。
「学び直し」を習慣化しておくこと、新しい知見や技術を取り入れることに抵抗感やハードルを下げておくことは、これからの時代を楽しく生きるために必須のスキルとも言えます。
みんなは、どんなことを「学び直し」てる?
「学び直し」を習慣化し、新しい知見や知識を知ること、これまで触れたことのなかった業界やジャンルの知見を学ぶことで、キャリアアップやキャリアチェンジなど働き方の選択肢を広げておくことは、楽しく生きていく上で大切になってきます。
では、社会人・大人のみなさんはどんなことを「学び直し」ているんでしょうか?
総務省統計局の「社会生活基本調査」によると、学習・自己啓発・訓練として社会人・大人が実際に行動に移している主なジャンルは次のようなものです。
- パソコンなどの情報処理
- 英語
- 商業実務・ビジネス関係
- 料理・裁縫など家事関係
- 芸術・文化
- 趣味などその他
- 歴史・経済・数学など(人文・社会・自然科学)
- 英語以外の外国語
- 介護関係
学び直しジャンル別に年代ごとの人気は?
ひと口に「学び直し」と言っても、その気になれば学べることは山のようにあり、どのジャンルの何を「学び直し」するのか悩ましいという方もいらっしゃいます。
大人や社会人は、働いている方や家事・育児と「学び直し」に充てられる時間に限りがあることが多いのが実際です。
仕事に役立つこと・生活に役立つこと・転職や独立に役立つこと・自分の生きがいになること、などなど「学び直し」するジャンルを選ぶ基準は人それぞれです。
そこで、参考になるように、ジャンルごとで30代・40代・50代・60代の年代別に、「学び直し」の人気をご紹介します。
パソコンなどの情報処理の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
30代・40代・50代・60代のどの年代でも人気なのが「パソコンなどの情報処理」の学び直しです。
仕事や生活におけるオンライン化の浸透や、スマホ・タブレットの普及など、仕事にも生活にも役立つ「学び直し」として人気なのが分かります。
30代・40代・50代・60代どの年代でも最も取り組まれている「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | パソコンなどの情報処理 |
---|---|
30代 | 1位 |
40代 | 1位 |
50代 | 1位 |
60代 | 2位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、60代で2位ですが、30代・40代・50代と幅広い年代で1位となっていて、最も取り組まれている「学び直し」と言えます。
ちなみに、後ほど紹介しますが60代の学び直しで1位のジャンルは「芸術・文化」になっています。
「パソコンなどの情報処理」は、政府でもデジタル庁の発足が決まるなど、これまで以上に生活にも仕事・ビジネスにも深く関係する場面が増えてくることが確実です。
どこの職場・業界に転職してもパソコンスキルが求められないことはないでしょう。
実際に取り組まれている方も増えていますし、キャリアアップ・キャリアチェンジのためにも、おすすめの「学び直し」ジャンルです。
英語の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
30代・40代・50代・60代のどの年代でも根強い人気なのが「英語」の学び直しです。
ただ特徴的なのが、年代が上がるにしたがって取り組まれている方の比率が下がっていっていることです。
より若い世代の方が、経済のグローバル化に対応することが迫られていることが分かります。
また、同時に50代・60代と年齢が高くなると語学に取り組むことにハードルが高くなってくることが分かります。
30代・40代の若い年代で人気、英語の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 英語 |
---|---|
30代 | 2位 |
40代 | 3位 |
50代 | 4位 |
60代 | 6位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、30代で2位、40代で3位、50代で4位、60代で6位と、年代が上がるにつれて人気が下がっています。
英語などの語学は若いうちに取り組むのがおすすめ、とも言えますし、50代・60代で英語の学び直し取り組めば同年代に差をつけられるとも言えますね。
いずれにしても英語・英会話のスキルは、かなり幅広い業界・職種で活かすことができるスキルです。
伝わる英語・使える英語を身に付けるには?
ひとつアドバイスとしては、ビジネスシーンで必要なのは「上手な英語」ではなくて、「伝わる英語」です。
受験で使うような英語や英文法のお勉強ではなく、とにかく話して慣れるオンライン英会話レッスンなどの方が就職・転職に役立つ「使える英語」を身に付けることができます。
キャリアアップ・キャリアチェンジを考えられるときに、おすすめの「学び直し」のひとつであることは間違いありません。
商業実務・ビジネス関係の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
30代・40代・50代・60代の年代の中で見ると、やはり若い年代で取り組まれる方が多い商業実務・ビジネス関係の「学び直し」です。
一定以上のキャリアが形成されている50代・60代よりも、これからキャリアアップを図りたい30代・40代の方が取り組まれる方が多い「学び直し」と言えます。
また「簿記3級」などの資格取得も商業実務・ビジネス関係の学び直しのひとつで、今の職場でのスキルアップや、転職・キャリアチェンジを考える際にも、おすすめの「学び直し」です。
30代・40代の若い年代で人気、商業実務・ビジネス関係の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 商業実務・ビジネス関係 |
---|---|
30代 | 3位 |
40代 | 2位 |
50代 | 5位 |
60代 | 7位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、40代の2位が最も高くキャリア形成の中盤ともいえる時期に、改めてビジネスに役立つ「学び直し」に多くの方が取り組まれていることが分かります。
また、50代になるとグラフでご紹介したように実際に取り組まれている方も減り、年代内での人気も9ジャンル中5位と、下位グループの「学び直し」になります。
ただ、「ハラスメント」や「個人情報保護」「情報セキュリティ」など、ビジネスや職場環境に必要な新しい知識や概念も登場してきています。
50代以上の世代でも、商業実務・ビジネス関係の「学び直し」に取り組むことは、より信頼される先輩・上司を目指すのにおすすめです。
料理・裁縫などの家事関係の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
料理・裁縫などの「学び直し」に取り組まれている方を、30代・40代・50代・60代の年代の中で見ると、40代が一番低いという結果でした。
キャリア形成上も、仕事・家事・育児にいちばん追われる世代で、料理などの家事の学び直しをされる方が少ないというのは分かりやすいですね。
また、40代を底に、50代・60代が高く、また30代でも高くなっていることは、みなさんがどのように人生を送っているかが分かりやすい結果です。
30代・40代・50代・60代の幅広い年代で根強い、料理など家事関係「学び直し」への人気
学び直しジャンル年代別順位 | 料理・裁縫など家事関係 |
---|---|
30代 | 4位 |
40代 | 5位 |
50代 | 3位 |
60代 | 3位 |
料理・裁縫などの家事関係の「学び直し」に取り組まれている方の比率の順位を年代別に見ると、9ジャンル中で3位~5位といずれの年代でも中位グループに属しています。
料理などの家事関係の学び直しは、人生を楽しく豊かなものにしてくれます。
どの年代でも根強い人気があるのが料理・裁縫などの家事関係の「学び直し」と言えます。
芸術・文化の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
30代・40代・50代・60代の年代の中で見ると、高い年代ほど取り組まれている方が多くなるのが芸術・文化の「学び直し」です。
50代になるとグンっと芸術・文化の学び直しに取り組まれる方が増えているのが特徴的で、老後を見据えて趣味や生きがい、楽しみを見つけようとされる方が増えるのが分かります。
50代・60代の高い年代で人気、芸術・文化の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 芸術・文化 |
---|---|
30代 | 5位 |
40代 | 4位 |
50代 | 2位 |
60代 | 1位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、60代で1位、50代で「パソコンなどの情報処理」に次いで2位と、高い年代で人気の「学び直し」になっています。
キャリア形成もひと段落し、仕事も家事も落ち着いてきた年代で、人生の楽しみにできる趣味や習い事を探される姿が見えてきます。
趣味などその他の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
30代・40代・50代・60代の年代の中で見ると、40代が極端に少ないのが特徴的です。
キャリア形成のど真ん中の世代で、仕事も生活もいわゆる「脂の乗り切った」世代である40代が、仕事や家庭にまい進している姿が見えてきます。
60代で人気の、趣味などその他の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 趣味などその他 |
---|---|
30代 | 6位 |
40代 | 6位 |
50代 | 6位 |
60代 | 4位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、60代で4位のほかは、30代・40代・50代ではいずれも9ジャンル中6位となりました。
楽しみに感じるジャンルでもあるので、「学び」とは感じてない可能性もありますが、人気としては中ほどの順位で、根強い人気という見方も出来ます。
息抜きやストレスの解消にも、長く楽しめる趣味を持つことはおすすめです。
歴史・経済・数学などの学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
歴史・経済・数学などの人文・社会・自然科学の学び直しは、年代別に見ると50代・60代で人気ですがが、30代・40代でも大きな差とまでは言えず取り組まれている方もいらっしゃいます。
特に歴史の「学び直し」は近年人気になっています。
歴史分野では新しい発見で書き換えられることも多く、小学校・中学校・高校と学んできた内容が変わっている場合もあり、楽しんで学び直しができるジャンルです。
50代・60代の高い年代でほど人気の歴史・経済・数学の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 歴史・経済・数学など |
---|---|
30代 | 7位 |
40代 | 7位 |
50代 | 6位 |
60代 | 5位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、30代・40代でから7位、50代で6位、60代で5位と年代が上がるにしたがって人気も上がっているのが分かります。
仕事や家庭が多忙な時期を過ぎ、生活にちょっと余裕が生まれる60代という姿が見えてきます。
英語以外の外国語の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
英語以外の外国語の「学び直し」に取り組んでいる方を、30代・40代・50代・60代の年代別で見ると、英語と同様に若い年代ほど高い傾向が見られます。
英語と異なるのは40代がやや低い傾向にあることで、仕事上に必要なこと役立つことを学び直しの対象に選ぶ傾向が強い40代で、英語以外の外国語がそこまで必要とされていないことが分かります。
英語以外の外国語の「学び直し」は30代・40代・50代・60代のどの年代でも取り組む人が少ない
学び直しジャンル年代別順位 | 英語以外の外国語 |
---|---|
30代 | 8位 |
40代 | 9位 |
50代 | 9位 |
60代 | 9位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、どの年代でも9ジャンル中で9位か8位と人気が低いことが分かります。
逆に言うと、中国語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語など英語以外の外国語の「学び直し」に取り組むと、ニッチな需要に応えられる語学スキルを身に付けられるとも言えますね。
介護関係の学び直し
出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)
介護関係の「学び直し」を年代別に見ると、50代で突出して高くなっています。
自身の親御さんや、自分自身の介護も視野に入ってくる年代で介護関係の「学び直し」に取り組まれる方が増えるのが分かります。
また、介護業界は常に求人のある人手不足の業界で、50代の方が再就職・転職を考える時に介護関係の「学び直し」を選ばれていることも考えられます。
年代が高くなるほど人気、介護関係の「学び直し」
学び直しジャンル年代別順位 | 介護関係 |
---|---|
30代 | 9位 |
40代 | 8位 |
50代 | 8位 |
60代 | 7位 |
年代別に取り組んでいる方の比率を順位で見ると、30代で最下位の9位、40代・50代で8位、60代で7位と年代が上がるにしたがって人気が高くなっています。
実際に介護が身近になる年代ほど、介護関係の「学び直し」に関心が高い傾向が分かります。
ちなみに、介護業界の現場は常に人手不足が問題になっていて、若い年代で介護関係の「学び直し」に取り組めば、現場で重宝されることも多く就職・転職には有利になります。
「学び直し」をやりたいけど、時間がないと感じるなら?
「学び直し」のジャンル別に、年代ごとで取り組まれている方の比率などをご紹介してきました。
学び直しに対する関心が高まっていますが、実際に行動に移せていない方もいらっしゃいます。
主な理由は、時間がない・お金がない・忙しい、といったことが挙げられています。
仕事に家事に育児に、なかなか「学び直し」のために時間をとれないという方もいらっしゃるでしょう。
おすすめなのはオンラインで習い事・学び直し
時間がないと「学び直し」を行動に移せていない方におすすめなのが、オンラインでの習い事・学び直しです。
スマホ完結で学べる資格や、在宅受験で取得できる資格などもあります。
特にスマホ完結のWEB学習・通信教育だと、電車での移動時間やちょっとした隙間時間を活用した学び直しが可能です。
また、そういった時間を有効活用できるようにプログラムが組まれていますので、無理なく「学び直し」に取り組めて、新しいスキルを身に付けたり、スキルアップが図れたりします。
1日15分・30分でも「学び直し」に充てると、さきざきの人生の楽しみが変わってきますよ♪