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新しい生活様式とは?
政府の専門家会議2020年5月1日に提言した内容に「新しい生活様式」の徹底というものがありました。
西村経済再生担当大臣は「新しい生活様式」について次のように説明しています。
西村経済再生担当大臣
出典:FNN
長丁場で付き合っていかなければならない、感染者をゼロにするのは難しい中で、接触機会を減らす新たな生活様式。
感染を押さえながら、徐々に社会生活、特に経済活動・消費行動を回していきたいという意向がにじむ説明でした。
具体的な「新しい生活様式」の例示は、専門家の意見を踏まえて5月4日に発表されるようですが、これまでの「ステイホーム=とにかく家にいて感染しない・させない」というところから、「外に出ても、ここまではOK」という方向に、徐々に緩和していくようです。
西村経済再生担当大臣
出典:FNN
これまではできるだけ家にいて人と接触しないということ。(中略)状況もみながらではあるが一定の行動については緩和していこうという方向。ただ、そこで接触が多く起こると感染が広がる可能性があるので、いわばスマートな形での生活様式の提案が(専門家会議から)なされた。
経済再開の動きがヨーロッパで広がっているのはなんで?
ところで、経済活動再開の動きは先進各国の中ではヨーロッパの方が顕著です。
ヨーロッパではまだ、被害拡大中のようなイメージがあったので、少し背景について調べてみると、worldometerというサイトに具体的な数値がありました。
日本のコロナ「患者」数は?
日々のニュースなどを観ていますと、累計の感染者数ばかり目にしますが、このサイトでは治った人数を引いた人数、今も「患者」である方の数(Active Cases)の推移が見られます。
グラフを見ますと、日本では5月1日時点で10,875人が患者さんとして闘病中であることが分かりますが、よく見ると徐々に「現在闘病中の患者さん」の数が減り始めています。(キャプションの背景になってて見えにくくてごめんない)
ただ、専門家会議の皆さんが仰るように、まだまだ油断してはいけないレベルの下がり方なんだとは思いますが、「現役の」患者さんの絶対数が下がり始めているグラフには、もうちょっと自粛生活を頑張ろうかと、勇気づけられます。
そこで、同じグラフでヨーロッパのドイツとイタリアを見てみました。
ドイツのコロナ「患者」数は?
ドイツでは現在闘病中の方、つまり「患者」さん(Active Cases)が4月6日をピーク(72,865名)にして約40%にまで低下しているのが分かります。
確かに、ここまで「患者さん」の数が低下したら経済を動かしたくなるのも分かりますね。
ワクチンや治療薬などの根本的な治療方法のない中ですから、「治っていく人」の数が「新しく患者になる人」の数を上回らない限り、「患者さん」の数は減らないはずで、相当に人の接触機会を減らす努力をしたことがうかがえますね。
ただ、それでも日本の3倍にあたる30,441名の現役の患者さんがいて(ドイツの人口は8300万人と日本の約70%です)、社会に与えたダメージの大きさも分かります。
次に、日本でも甚大な被害が報道されるイタリアの状況を見てみました。
イタリアのコロナ「患者」数は?
イタリアでも闘病中の「患者」さんの数が、ドイツほど急激ではないにせよ、緩やかに下降し始めています。
同時に「コロナ自粛疲れ」「ロックダウン疲れ」もピークなのではないかと想像できますし、こちらも経済を少しでも動かしたくなるのが分かります。
ただ、左側の目盛りを見ていただいても分かりますが、5月1日現在でも100,943名、10万人以上の患者さんが闘病中のようですから、まさに日本とは桁が違います。
新しい生活様式は個人消費・経済にどんな影響を及ぼすか?
個人の行動を「禁止(罰則や逮捕を伴う規制)」することが出来ない日本を自由な良い国と考えるか、手ぬるい対策しかできない国と考えるかは、思想信条にもよりますが、ともあれ現状では「お願い」しか出来ないのが現在の日本政府なのは間違いありません。
なので、政府から国民への提案という、世界的にみたらなんだか不思議にも思えることがおきますが、「新しい生活様式」もまた提案のひとつなんだろうと思います。
実際、感染が拡大したら(というか自分自身が感染したら)困るわけで、提案の内容に注目が集まりますが、やはり「これまで通りには戻らない」内容なのは確実で、経済や消費行動への影響が気になります。
大幅な個人消費の落ち込みが続きそう
100万人分のクレジットカード会員の消費行動を解析して毎月発表している「JCB消費NOW」に依りますと、3月時点で「スーパー」「コンビニ」以外の全ての業種で大幅な消費の落ち込みを記録しています。
先に消費があがった「スーパー」では17%アップ(前年同月比)、「コンビニ」では12%アップ(同)と、外出自粛による効果が出ています。
ただ、それ以外では居酒屋で25%のマイナス(同)、ホテル36%減(同)、遊園地では96%のマイナス(同)、映画館で68%減(同)、鉄道旅客でも53%減(同)と大きなダメージが3月時点で出ています。
朝日新聞
国内で感染が広がって大型行事自粛が始まった2月後半は、前年同期比0・3%減。3月前半には7・7%減と急落し、消費増税後の昨年10月前半(6・5%減)を上回る落ち込みだった。全国10地域別にみると、東北、北陸、四国以外は10%超も下げていた。3月15日時点の感染者は朝日新聞の集計で、南関東と近畿200人超、東海と北海道100人超に対し、東北、四国は20人以下、北陸も20人超だった。
4月7日の緊急事態宣言発令後のデータはまだ発表されていませんが、緊急事態宣言の延長で個人消費が約28兆円減少するという分析も出ています。
時事通信
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、宣言の1カ月延長で個人消費の減少額が13.9兆円増えて27.8兆円になると予測する。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、従来の宣言で2020年度の実質GDP(国内総生産)が1.6%押し下げられるとみていた。宣言延長でさらに1.5%低下し、マイナス6.3%に落ち込むと予測。4~6月期に大きく落ち込んだ後に急上昇するものの、年度内は1~3月期の水準に戻らないとみている。
同じ記事では新規の失業者77万人増えるとの予測も出ており、不況の到来を予感する方が広がる中、財布のヒモが固くなっていくことも予測されます。
ネットでの販売やデリバリーなど、「新しい生活様式」の中でも個人消費を喚起し取り込んでいく工夫が欠かせない、つらい時期が続きそうです。
また、経済へのダメージの大きさが明らかになるにつれ、一過性では終わりそうになく、個人個人の生活防衛のために本格的なコロナ不況の到来に備えた方が良さそうです。